短いディスコン棒との出会いは,大井工場が東京総合車両センターになったばかりの2004年8月の工場見学でした.車両部品頒布会場で売れ残った黄色い棒を見て,クハ111-1034と車号も入っているし¥500で安いし,面白そうだから買ってみたというのがきっかけです.眺めているうちに,そういえば昔の通勤・近郊型の運転台助手席側にこんな棒が備えてあったなとハタと思い当たり,調べてみると断路器の接点を操作するディスコン棒であることが分かりました.当ブログ「横浜機関区の転車台」でも示した通り,機関車のパンタグラフを揚げる長いディスコン棒については「D51から新幹線まで(鉄道図書刊行会1966年) 」という新幹線運転士さんの書かれた本で知っていたのですが,このような短いものもディスコン棒と呼ぶことを初めて知りました.

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一般的なグラスファイバー製ディスコン棒.長さ50cm,直径3cmほどで,一端に真鍮製のフック,反対側には手袋使用時のすり抜け止めに玉がついています.赤い部分はクリップに挟んで固定する部分で,直径が少し小さくなっています.車号がペイントされているものが多く,EF65-92(?)の方は使用頻度を物語る擦り減り方です.棒部分が木製や塩ビ製のものもあります.

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旧NEXモハ253床下の断路器箱内の様子.ナイフスイッチのような銅製接点がたくさん見えます.ディスコン棒のフックで銅片を引掛けて操作し,接点をオンオフします.2005.9.10大船工場にて.

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東北上越新幹線226-110搭載のディスコン棒.デッキ部の機器盤に備えられていたのか,非常にきれいな状態です.柄は木製でニスが塗られ,玉部とのつなぎに装飾が入るなど木工細工としても凝っています.長さは37cm程度と在来線のものに比べ短めで,フックが大小2つあるのと,ロータリースイッチを回すためか先端がマイナスドライバー状になっています.

さて,ディスコン棒そのものは強電用操作器具として一般的なもので,商品名としても使われていますが,正式名称は結構厳めしく,JIS規格 C-4510では「断路器操作用フック棒;Hook bars for disconnecting switch operation」と規定されています.これよりディスコン(ジスコン,デスコンとも表記)棒→ Disconnecting barというのはどうも和製英語らしく,技術用語として怪しくなってきました.そこで海外の電気工事用品メーカーのサイトを調べてみると,Disconnect stick, Switch and disconnect stick, Prong hot stick(突起付活線棒)等が一般的で,長いものにはpoleが使われていました. いずれにしてもbarというのは「(何かを制限するための)横棒」のニュアンスがあるようで,stick(ステッキ)だったのは意外でした.
ちなみに鉄道現場ではパン揚げに使う長いpoleを大ディスコン棒,短いstickを小ディスコン棒と言って区別しているようです.また,継ぎ竿式で機関車内や床下に格納する大ディスコン棒もあるようです.