テキサス・ヒューストンに1週間ほど出張の機会があり,オフ日にレンタカーで近郊のヤードに出かけてみました.当時はSouthern Pacificでしたが,現在はUnion PacificのEnglewoodヤードとなっています(撮影日:1988.10.19).

CB8373_SD40

Cotton Belt(St.Louis Southwestern; '92年SPに統合)の8373(SD40T-2, 3000HP, 167t)を先頭に8270+GP9(?)がヤードを出発してきました.早速3重連に遭遇!

CB8373_goldharrimen

ヤード入口の看板には”Southern Pacific Houston Terminal”とあり,無事故記録の顕彰”Gold Harriman”の記述や,事故記録のカウンタボードを兼ねていました.2階建ての巨大なAuto Rackは訪問時は素性が判らず,帰国してから日本の「ク」相当と知り,屋根付き車両で丁寧に運ぶのに感心.

広大なヤード周辺を撮影場所を探して炎天下走り回り,高架道路(Wayside Dr.)からヤードを観察できる場所があり,しばし陣取って撮影.

Huston-3

高架通過中の3重連を撮影.左からSP2961+2969+2968(SD35, 2500HP, 164t).このころはサンタフェ(SF)との合併話が進んでおり,社名変更に対応できるよう塗装変更された機関車(Kodacrome色)がいました.SPの右にSFを追加して「SPSF」にすべく,スペースが空けてあります.結局ICC(州間商業委員会)の反対評決で流れ,実現しませんでした.

Huston-2

Googleストリートビューによる現在の様子.信号所は改築されてるようですが,道路灯など当時とあまり変わってませんね.

BN7028-1

高架を反対側から見たところ.別の3重連が橋上にやってくるなか,BNの重連が珍しい多線平面クロスへと向かいます.信号所にはSPのマーク.

BN7028-2

BNの7028+6331(SD40-2, 3000HP, 167t)が平面クロスを渡るところ.

BN7028-3

同上の後追い.ホッパ車も巨大!機関士さんが乗務している車両は,屋根上の黄色のパトライトが点滅していました.

UP1392 1332

同じところをUPのスイッチャー1392+1332(MP15DC, 1500HP, 112t)が逆向きに走ってきました.複線なのに方向別になっておらず不思議な運用ですが,米国では線路選択はディスパッチャーの権限のようですね.

高架橋からHouston都心の高層ビル街を見る.右はGoogle Mapで示した位置関係で,右上から左下を見たところ.

Huston-1 map

SP6846-2

なんとDL10連の貨物列車がやってきて唖然!前から解析してみると,SP6846(SD45T-2, 3600HP, 167t) + SP(GP9, 1750HP, 120t) + CB7633(GP40-2, 3000HP, 114t) + SP(SD45T-2, 3600HP, 167t)+SP(U33C, 3300HP, 180t) x2 + SPコダ色(SD45T-2, 3600HP, 167t)+Southern黒(SD45, 3600HP, 167t) + SP(SD45, 3600HP, 167t) + SP(SD45T-2, 3600HP, 167t)で,総馬力36550HP, 重量1596tという重厚長大モノ.

SP6846-1

正面からとらえた10連.模型で実現するのも大変そう.

SP6846-3

先頭の6846はトンネルモーター(T)仕様なので,冷却風取入グリルがデッキ直上,キャブ天井よりもラジエータ部分が高くとにかく巨大!

SP6846-4

HT-C型3軸台車も軸距が大きい.でも巨体に似合わず,鐘がついているのがご愛敬.結局この機関士さん1人で動かしてるんですよねぇ.

SP6846-5

3両目のCotton Belt 7633(GP40-2).ボンネットのライトはへこみが怪しく改造モノか?

このほかにも多重連の貨物列車が多く出入りしていましたが,驚いたのは車輪がロックしてしまい白煙を上げながらキーキー走ってきたタンク車がいたことです.車輪はフラットという状態を超えて欠けた月みたいで,メンテはどうなってるんだ,脱線しないだろうなぁと危惧しました.この後,スイッチャーの居る踏切へと向かいました.

SP2619-1

端面がオレンジ警戒色のスイッチャーがたむろしていました.詰所も米国風.

SP2619-2

2619(MP15DC, 1500HP,112t)が貨物列車を牽いてきました.

Majestic St.付近の踏切を渡る2619.遮断機があっても車が止まらないので,やたらに警笛を鳴らしていました.Google Mapで現在の様子を見てみると,遮断機は撤去されたようです(右).

SP2619-3 SP2619-4

SP2690-1

道路近くに止まっていた2690(MP15DC;直流発電機版)を観察.AC版は正面グリルが廃止され,ボンネット横に冷却風インテークがあるので区別できます.

SP2690-2

キャブのサイドビュー.標準品のBlomberg B台車はブレーキシリンダーがチョイ飛び出し気味でゴツイ感じ.HOUSTONの配置区名がペイントされてました.

SP2690-3

デッキが低くて乗りやすそうです.

SP2690-4

しばらくすると単機で出かけていきました.機関士さんは陽気で,通りすがりに挨拶してくれました.

SP3317-1

踏切から回送で現れた重連3317(GP9, 1750HP, 120t) + 4122(GP20, 2000HP, 120t).

SP3317-2

上の後追いです.GP20のほうがボンネットが低くて見通しが良.

Box-2

Hydra-Cushionは1954年にSPとスタンフォード研究所(SRI)が開発した連結器の緩衝装置で,壊れやすいものの輸送に大活躍.

サイト(http://espee.railfan.net/sp_fcss-01.html)に掲載されている原理図.イマイチ詳細が分からないのですが,連結器どうしは棒で結合され,中央の枚葉式摩擦板と油圧でショックを吸収するみたいです.

hydra-cushion

Box-1

ずらりと並んだBoxcar.やはり巨大!

以上,圧倒的なパワーとサイズに圧倒され,日本の鉄道輸送との違いを考えさせられた訪問になりました.
※機関車の車番は当時のもので,会社の買収/合併や車両更新に伴い改番されてる可能性があります.

本稿終わり