オレンジラインの終点,西子灣站 (哈瑪星;ハマセン)周辺は,かつての高雄港駅(打狗停車場)で広大なヤードのあった臨港線地区です.現在周辺はLRT整備とともに開発中ですが,高雄港駅の駅舎は「打狗鉄道故事館」として保存され,ちょっとした鉄道博物館になっています.ヤード跡についても「哈瑪星鐵道文化園區」として,鉄道にまつわる芸術作品や車両の屋外展示があります.さらに,原鉄道博物館とコラボして「哈瑪星台灣鐵道館」もオープンしており,横浜生まれの筆者としては,みなとみらい→山手→本牧あたりを連想させられました.以下,これらの紹介です.

打狗鉄道故事館

 中華民国鉄道文化協会が「高雄港駅」一帯の保存を高雄市に働きかけ,2010年4月に市政府文化局から指定古蹟認定されたということで,鉄博というより名所旧跡の感があります.2014年には林口線(桃園市)を走っていた台湾電力の石炭輸送用DL2両を引取り,常設展示に加えられました.

dg-01

打狗鉄道故事館西子灣站の2番出口のエスカレータを上がるとすぐ,打狗鉄道故事館の玄関が見えます.

dg-02

本来の駅舎入口に,H鋼とガラス屋根で新調したエントランス部分で,切り文字で「打狗(高雄の旧地名)を表示.

dg-05

入ったところは出札口(客票售票處)で,受付の係員さんがいますが,入場無料なので会釈して中に入ると,乗車券箱,スタンプ等が展示されています.ダッチングマシンもありました.カバーが失われていますが,フォルムや印字機構で菅沼式と分かりますね.台湾にも進出していたことが確認できました.

駅長室や会議室なども公開され,ゆかりの資料が展示されていました.

dg-03 dg-04

dg-06

駅構内にある臨港線航空写真の看板で,扇方庫も見えます.保存駅舎は右下辺りです.

dg-13

ホーム側から見た駅舎.「高雄港」の駅名板が由来を物語っています.

ホームに車両が保存展示されていますが,中央部分にLRTの新駅が建設中のためスペースが分断されており,すべてを直近で観察することはできませんでした.故事館のHPによれば,展示保存車両は以下の通りです.

車 両 相 当 形 式 台 鉄 番 号
駅ホーム側
蒸汽機關車 C55 CT259
蒸汽機關車 9600 DT609
柴液機關車 台電・日立製 L02/D-3
工程平車 (ヤ)チキ 15EF19
篷守車 ワフ 3CK2109F19
敞車 トキ 35G20060
LRT新線側(近づけませんでした)
柴液機關車 台電・独Schöma製 L03
煤斗車 ホキ P35H22019
平車 チキ 35F20106;見当たらず
二等客車 オハ 35SP32426
電源行李車 マニ 45PBK32952
dg-07

国鉄9600と同系のDT609(元828,1929年,汽車大阪製).容貌は9600そのものですが,カウキャッチャーが南国らしさを加味.ヘッドライトがシールドビーム風で,意外と小さいですね.

dg-08

こちらはC55のCT259(C559,1939年,三菱神戸製).角張ったデフ,給水温め器と水かきスポーク動輪がいかにもC55でした.やはりカウキャッチャー付き.右はヤチキ(工程平車)の15EF19で,1911(M44)年と古豪の日車製で,リベット工作物.

dg-09

台湾電力専用線のD-3/L02.前後に台電のマークが入ってました.チョット塗装が心配な状態.

dg-11

修復されたばかりと思しき綺麗なワフ(篷守車)3CK2109.すぐ横ではLRTの新駅建設が進んでいます.

dg-12

建設中のLRTホームの様子.鉄道故事館直結の新駅で,展示物の充実が期待されますね.

哈瑪星鐵道文化園區

 鉄道故事館周辺のヤード跡は広大な公園になっており,哈瑪星鐵道文化園區という名称がついています.港側に展示物がありますが何せ広い場所なので,あまり目立ちません.レールが撤去されていないので運動場というわけにもいかず,現在は発展途上という感じでした.

ヤード跡です.草に覆われていて芝生広場のようですが,転轍機のダルマで線路があったことがうかがえます.ちょっと歩くと,様々のオブジェがおかれていました.

dg-14 dg-18

dg-21

反対側から見た鉄道故事館.工事中で車両(ホキ+台電L03+マニ+オハ)に近づけず,残念.

dg-15

公園に保存されているCK58(元E50型57,1912(M45/T元)年,汽車大阪製).苗栗付近の山線急行用に,当時欧米で流行の1C1タンク機を製作したと説明板にありました.

哈瑪星台灣鐵道館

 臨海部分の上屋には「哈瑪星台灣鐵道館」がありますが,LRTの工事中で直行できず,炎天下遠回りを強いられました.哈瑪星は日本語の「濱線(はません)→臨港線」の音を当てたということですが,ここは原鉄道博物館との関連が深いので「横浜線」かと勝手に想像してました.

dg-17

上屋の妻面に大きなサインが出ているので,間違うことはないでしょう.

上屋の周辺には5インチゲージ(ハマ星駁二ミニ線)が敷設されており,この日の車両は高雄LRTでした.動力車は最後部で,乗客を前にして推進運転する方法.この方が安全確認しやすいだろうと感心!線路配置は大きなリバースを2つ向い合せたような構成で,ポイントや並行部分もあるかなり凝った造りでした.

dg-19 dg-23

dg-20

大型のレイアウトで,台湾各駅のセクションをつないだような構成となっており,なかなか見ごたえがあります.係員のお姉さんが,レイアウトを背景に記念写真を撮ってくれます.2階は回廊になっており,レイアウトが上から見渡せるのと,原鉄道模型の一部が展示されていました.

dg-16

故事館入口から,西子灣站方面を望む.本格的な鉄道公園のようになると面白い.整備されたら,ぜひとも再訪問したしたいです.

「哈瑪星台灣鐵道館」日本語パンフレット ←pdf表示

4)台湾一周:前編 に続く