ひたちなか海浜鉄道は自/他社製・新/旧を取り混ぜた各種DCが走り,ファンにとって実に興味深い路線です.また,各種アニメや町おこしともコラボしているため,多くのブログ/HPで取り上げられています.遅まきながら,当ブログでもようやく那珂湊駅訪問の機会が得られました.
駅と構内
那珂湊駅正面のたたずまい.アニメ・ガルパンでは,正確に描写された駅舎が背景に登場します.
大きな社名入り提灯がぶら下がる改札口.丸窓の有人出札窓口やパイプ製の改札ラッチ,電照式時刻表など,昭和アイテムにあふれ,懐かしい雰囲気でした.
島式ホーム側から改札を望む.警報機のある構内踏切.幅の広さが大駅の貫禄.
元JR東海のキハ11-5(元123,2015.4移籍)の勝田行,128レ.「JR東海・名古屋工場,平成元年」の楕円銘板をつけて走ってました.
下り127レ,元三木鉄道ミキ300-103(2009.3移籍)と交換するところ.下り列車の乗務員さんはここで交代.ブレーキハンドルのみの身軽な姿でした.
排気煙を残して阿字ヶ浦へと向かう127レ.暖地なのでスノープローは不要でしょうが,踏み切り対策かな?
中線に留置されている,部品取り用のキハ11-202.次位はキハ2004(元留萌鉄道,'70年移籍).後ろには保線車両.右はキハ11-6(元203).
※キハ2004は,撮影ほぼ1月後の2016.10.13に那珂湊駅をトレーラで搬出,10.17に平成筑豊鉄道・金田駅に搬入され,イベント用に整備して動態保存されるようです.北海道→本州→九州と日本中を遍歴するとは,夢にも思わなかったでしょうね.
島式ホームの勝田側には,タンクを載せた保線チキがモーターカーにつながれていました.3本の伸びた棒先か,ら除草剤でも散布するのでしょうか.左には「クリーニング専科」ラッピングのキハ11-7(元204).右はキハ205(元キハ20-522)+トラ15/16(元東武トラ1).
構内観察・周辺から
駅の両側には踏切があるので,構内沿いに一周可能です.
阿字ヶ浦側の踏切から構内を望む.右側にシェッドと本社の社屋があります.ピットには「Duel Masters」ラッピング者のキハ3710-02が休んでいました.
元JR東海のキハ11が並ぶ構内.
勝田側から見た構内の様子.ダルマのケハや,朱色・角灯のキハ20-429,保線車両などが留置され,トワイライト的な雰囲気にあふれています.
下り線のレールは複雑なS字カーブでホームへと続きます.矢羽信号機は定位の連続.
裏手に回ると,動物ラッピングの最新鋭キハ37100-3(2002年製)が見えました.右は部品取り用のキハ11-201と台車.
ケハ601と形式称号の謎
那珂湊訪問の一番の理由は,ステンレス気動車ケハ601の廃車体を見たいということでした.初見参のケハはダルマになってもさすがステンレスの輝きで,十分な存在感がありました.室内をギャラリー化して大事にされているということですが,説明看板などの文化財的な扱いがあればbetterですね.
コルゲートと湘南顔が唯一無二のケハ601.昭和35年新潟鉄工製で,キハ35-900より3年先輩.ステンレス=東急車輛という思い込みも改めました.
平成6年全検期限のペイント標記が残ります.スポット溶接の跡は,東急モノよりも直径は小さいですが,針で刺したように凹みが深く見えます.
さて「ケハ」という形式称号ですが,国内では留萌鉄道に2例あるほかは,茨城交通のみで使われていたようです(世界の鉄道 – 日本の私鉄気動車,昭和42年版,朝日新聞).おそらく軽油の「ケ」だろうとは想像していましたが,なぜ敢えて通常の「キハ」と異なる表記を用いているのか疑問に思い,15年ほど前に当時の茨城交通に直接お尋ねしてみました.すぐに懇切なお返事を頂き,それによれば『社員に満鉄からの引揚者がいて,満鉄の旅客軽油気動車の形式称号「ケ」を用いた』ということで,意外な由来に驚きました.Wikiの「南満州鉄道の車両」の記述では,「ケ」の由来が軽油,ケロシンの2通りで表記ブレがありますが,いずれにしてもディーゼルのジ(満鉄ではジーゼルと表記,重油のジとも)と区別して,燃料のを違いを明らかにする目的だったのでしょう.
阿字ヶ浦駅
せっかくなので,終点の阿字ヶ浦駅にも足を伸ばしてみました.昔は国鉄からの海水浴列車「あじがうら」が発着したということで,有効長の長い配線となっています.
残暑の強烈な太陽がジリジリと照り付けていた阿字ヶ浦駅.ホーム横付けの保存車両が出迎えてくれました.
勝田側の線路の様子.四角いコンクリート製の給水塔.昭和2年の開業時のもの?ヒギンズ氏の「昭和30年代の鉄道風景」では,昭和39年まで湊線にSLが走っていたことが確認できます.
夏空の下,長大な構内配線を観察してきました.この先,ひたち海浜公園への延長が予定されています.
青/白の国鉄旧気動車塗装のキハ222(S.37富士重製,羽幌炭礦鉄道よりS.46移籍).「走り続けた54年間に感謝」の張り紙が窓に掲示されていました.
赤ヒゲのキハ2005(S.41東急製,留萌鉄道よりS.44移籍)ですが,筆者にとっては島鉄キハ55を思い起こさせました.こちらは「走り続けた49年間に感謝」が掲示されていました.
【島鉄キハ55はこちら】
車両の来歴が複雑なひたちなか海浜鉄道は,面白い歴史的背景も隠されていました.今後,海浜公園への延長が取り沙汰されていますが,アニメ・コラボによる鉄道起こしみならず,交通手段として本来の機能を果たすことが期待できそうです.
本稿終わり
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