前回のカナダ編では,いきなり米国型DLの話に飛んでしまいました.米国型はなじみが薄く興味もイマイチ,なんせメーカーや形式もわからんし,という方々に超早わかりの概略フォローです.
鉄道会社
貨物鉄道は地域ごとに数多くの私鉄がありますが,大陸横断系大手は長大な貨物列車(コンテナ,ピギーバック,石油,鉱石,自動車)の運行が主体で,最近はUP(Union Pacific)とBNSF(Burlington Northern Santa Fe)の2社に集約されたとみなして良いでしょう.ここ20~30年ほどは合併や買収で頻繁に会社名が変わり,機関車の塗色もこれに合わせて目まぐるしく変化するという時期がありました.旅客鉄道は都市部の地下鉄やトラムなどがありますが,本線系はAMTRAKや自治体による通勤列車など極く少数です.
DLとメーカー
DLは一部旧型を除いてほぼ100%電気式であり,駆動メカ的には旧DD50/DF50,新DF200/HD300などと同様で,ディーゼル発電機付きELとみなせます.機関車の形式はメーカーモデルの型番,機関車番号は鉄道会社ごとのシリアルナンバーなので,国鉄準拠の日本と異なり直接的にはわかりにくいです.メーカーについては昔は複数の専業メーカー(Alcoなど)がありましたが,現在はEMDとGEの2大メーカーの寡占となっており,いわば「車屋(トヨタ)」と「電機屋(東芝/日立)」の競作状態と言えましょう.ただ実際にはEMDの機関車を見かけることが多く,時々GE製がいるなぁというのが実感です.主なメーカーは下記3社で,Katoの模型もこれらの社のものがベースです.
EMD:Electro Motive Division
ゼネラルモーターズ(GM)の機関車事業部,カナダの事業部はGMDと略する場合があります.モデル名としてGP(General Purpose ;軸配置B-BのDD形)またはSD(Special Duty ;C-CのDF形)が頭にきて,2桁数字はモデル番号,バリエーションを示すアルファベット(W;ワイドキャブ,AC;交流モーターなど)というのが一般的.古いモデルではキャブユニットのE,Fもありました.また旧型GPはジープ(軍用ジープにちなむ)と称され,一大勢力を誇っていました.入換機(Switcher)のモデル名はSWが多いですが,Wは溶接台枠(Welded)の意味で,鋳造(Casted)台枠ではSCとなります.
GE:General Electric
ご存じエジソン由来の総合電機メーカー.モデル名はB(B-B;DD形)またはC(C-C;DF形)で始まり,エンジン出力の2桁または4桁数字(例23;2300HP)が続き,最後にモデル名を示す-X(ダッシュ+数字X)がつくので,EMDよりはわかりやすいです.-2(ダッシュ・ツー)モデルはEMDのジープに対抗してU(Universal;汎用)がモデル名であったため,独潜にちなんでUボートと称されるグループを形成していました.-9まで続いた後,AC(交流),ES(環境対策)シリーズに発展しています.GEの機関車は冷却ファンがフード上部で横に大きく張り出しているモノが多いので,EMD製と簡単に区別がつきます.
Alco:Americal Locomotive Campany
GEの電装品を使って機関車を作っていましたが,1969年にカナダのMLW(Montrreal Locomotive Works)に事業譲渡し会社消滅.MLWはさらに紆余曲折を経て,現在はボンバルディアの客車製造工場になっています.旅客用キャブユニットのPA/PB,貨物用のFA/FBなどが有名です.フードユニットはRS(Road Switcher)が有名で,キャブの深い丸屋根や,フード隅部が丸みを持った形状に特徴があり,Alco製と識別できます.GEのUボート対策としてC(Century)シリーズも開発されました.
外観的分類
外観的な印象を大雑把に作図してみると以下の4通りの形態となり,これが車両同定の第一歩となります.
キャブユニット(Cab Unit)
米国型DLの代表選手みたいな顔つきで,ボンネットの突き出たタイプです.サンタフェの赤いワーボネット(インディアン羽飾り)塗装などが有名でしたが,旧型なので少数派です.運転台のあるタイプをAユニット,運転台の無い中間タイプをBユニット(Booster:ブースター)と称し,A+B,A+B+A,A+B+B+Aなどの多重連で用いられる場合が多いです.メーカー型番でE,Fなどがコレに相当.
フードユニット(Hood Unit)
米国型DLの一般タイプで,日本ではDE10などのセミセンターキャブと称されるタイプに近いです.キャブの幅,前後のフード(ボンネット)の幅や高さにバリエーションがあり,Boosterユニットも存在します.現在はショートフード(前部ボンネット)の幅を運転台と同じく台枠一杯に拡張したワイドタイプ(W)が主流です.本ユニットも貨物列車では多重連で用いられるのが常.
カウルユニット(Cowl Unit)
フードユニットの運転台部をそのまま後方に伸ばしたような形状で,主に旅客用機関車に用いられます.もともとはサンタフェ鉄道のリクエストで,旅客用機関車としてカッコを追求したものです.キャブユニットの現代版といったところで,AMTRAKの旅客列車などでよく見かけられます.最近では流線形に近い形態もあり.
入換機(Switcher)
入換機はDD20-1のように,キャブを片側に寄せた形態が一般的です.ブースターもありますが,入換機の場合は駆動軸数を増やした方が牽引力を発揮できるということもあり,エンジン無しで電動台車+電源ケーブル+錘のみのユニットがあります.このような車両はBoosterではなくスラグ(Slug)と称され,運転台付車両と組み合わせて用いられます.
技術トレンド
おおよその技術トレンドは以下のように推移しています.EMDの例で示していますが,競合メーカーのGEもほぼ同様です.
- 旧型オリジナル
- 電装基板のプラグイン・モジュール化(’72~,ダッシュ2など←GEの-2とは異なる)
- PCコントロール化(’84~,SD60など)
- 交流機器化(’95~,SD70など)
- 排ガス環境対策(’02~,SD90?)
参考サイトや参考書など
ネットで機関車のNo.から車両の諸元を調べる:下記写真サイトで検索
車両名簿(Roster,配置表):ちょっと古いですが役立ちます
Diesel Locomotive Rosters, Kalmbach Books,1982
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