建設のいきさつ

 我が家は道路面から階段6段分,1.1mほど昇った敷地上に在ります.買いもの後は,駐車場から屋内台所までの物品搬入が欠かせません.秋口に水物などの重量物を多めに購入したとき,階段をクリアしただけで以後の運び込みに苦労し,今はまだ大丈夫だが年をとったらこの作業が続けられるだろうかと,ハタと思いました.それなら元気なうちに家の外周沿って勝手口まで5インチゲージの線路を張り巡らせ,昔の商家にあったようなトロッッコを造って運搬できるようにしておいたらどうだろう,というのが建設の動機です.折りしも10年前に設置した飛び石が芝に埋まってしまい,外構の見直しを考えていたところで,早速,路線の測量から始めました.

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配線略図です.線路は全長16.3mほどで,玄関から勝手口までのカギの手状の配置.カーブ半径はマンホールをかわすとともに,2直線の建屋からの距離を両立させて決定しました.この合わせ込みが結構面倒で,未加工のレールを置いて,何度か試行錯誤して,配置と寸法を決定しました.以後記事では,左側が西部直線,下側が南部直線,およびカーブ部で記載します.

 

 

さて,凡その計画は出来たものの,いざ実行となると家族,特に奥方の同意を取り付けないと,後々のトラブルの元になりかねません.まずは庭トロ敷設による物品搬入の労力軽減を力説するとともに,飛び石の復活と歩道化を併せること,レールは歩道に埋め込んで極力目だたないようにする,等々の条件・仕様を出し,最大の難関をクリアしました.

Before/After

各部の建設の様子については順次掲載していきますが,まずは建設のBefore/Afterをご覧ください.

家の南側,南部直線を道路から見たところ.玄関から洗い場カーブに至る部分のBefore/Afterです.芝に埋まった飛び石を掘り起こしでタイルで歩道化し,レールを埋め込んであります.


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西部直線とカーブ部のBefore/After.台所階段の取り合いで,生垣のレンガ仕切ぎりぎりにレールを配置.既設敷石は別場所で再利用し,新たにテラコッタ風敷石を設置.

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建設は,まず西部直線の生垣に沿った奥側部分から始め,南部直線,カーブ部の3期を考えました.しかし実際にはカーブの取り合いで現物合わせが必要で,南部とカーブは一体で進めることになりました.

レール製作

 今回のレールはモルタルに埋め込むので,目地棒にねじ固定というヤワな従来手法をとるわけにはいきません.幸いこの10年間でアルミ溶接法を習得しており,今回はアルミレールとアルミ枕木(W25xL250xt5mm)のイナートガス(Ar)溶接により加工しました.ここでは10年前に目地棒枕木用に作った治具を改造し,レールを枕木にボルトで押し付け固定し,効率よく溶接作業が出来るようにしました.

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溶接する枕木とレールの位置合わをして,上から鉄の角パイプでボルト締め固定しているところ.

rail溶接するときは,枕木の厚い部分とレールの下部を十分溶け込ませるため,枕木側からアークを出し,楕円形に溶接部位を動かします(図の赤い部分).始めに枕木部分を十分溶かしてからレールの縁に移すようにするとうまくいくので,枕木部分にかかる楕円面積を大きくとります.溶接速度が早すぎると溶け込みが浅く剥がれてしまうので,慣れるまでそれなりの練習が必要.

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溶接部分を右にずらして新たな枕木を固定し,直線線路を作ります.右下に見えるのは溶接トーチで,アルミワイヤのリール付.チョット重いですが,溶接機本体からのワイヤ供給ではやわらかいアルミワイヤが途中で曲がって詰まるので,リール付ト-チを用います.溶接機はスズキッドのi-MIGOを使用.

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カーブレールも,バイスとベアリングの曲げ治具による従来加工法をそのまま利用.

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床にマジックでケガいた曲線にあわせ,カーブレールを木製治具で保持し,溶接していきます.曲率をきっちり出すにはそれなりのテンプレートが必要ですが,一品モノの場合,両端を先に溶接してしまい,中を適当に合わせていくと楽です.スラックは3mmとっているので,ゲージは130mmとなります.

 溶接部には黒い煤がつくので,ワイヤブラシ等で落とします.またレール継ぎ目板用のねじ穴は,溶接前にあらかじめ明けておくと楽です.

2)西部直線1 に続く