ルポ探20.高雄 6)嘉義車庫園区

 子供の頃,鉄道雑誌に出ていた阿里山森林鉄道の記事を見て,シェイという特殊なSLの存在を知り,いつか現物を見たいと思っていました.乗用模型では神奈川・松田のポッポ鉄道でお目にかかっていますが,今回は本物を見るまたとない機会で,ぜひ嘉義を訪問することにしました.早速時刻表を調べてみたものの,平日は途中の奮起湖までの一往復のみ,しかも目下災害復旧中です(7月から全通.残念!).帰りの列車は2時間待ちで,バスで戻ろうにも停留所までは炎天下数キロの山道です.追い打ちをかけるように,訪問前日までの大雨で,TVでは阿里山周辺の崖崩れを報道しており,台鉄の予約サイトも不調!ということで,やむなく今回は嘉義駅と嘉義車庫園区を訪問することにしました

嘉義駅

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嘉義駅前広場.高雄もそうでしたが,大駅の地下化や高架化の工事が行われており,嘉義は高架化工事の最中です.

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広いコンコースと自動改札の入口です.もう少し広くて暗いと,昔の横浜駅東口のホールようですがね.

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ホームから見た出口の様子です.古レールの鉄骨とトラス構造の一般的な屋根構造.

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鉄骨を受ける金具ですが,猫足風意匠の鋳物で,なかなか凝った作りでした.古レールの構造物でも,昔の設計者は細かいところにも気を配ってたんですね.

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例によって,柱の古レールのロールマークを探してみました.ペイントの厚化粧を画像処理してみると「U.S.A. CARNEGIE 1915(大正4年)」が現れ,米国カーネギー社製であることがわかりました.※写真では柱を横にしてあります.

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普悠瑪111,潮州行が到着したところ.お客さんは暑熱の中,日陰のホームで待ちわびた様子でした.

 さて,森林鉄道のホームは上記写真の奥の方にあります.ホームを歩いていくと,駅事務室や洗面所,鉄道警察などがあり,その先に森林鉄道のホームがありました.

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植え込みや鉄警隊詰所が続くホームを歩いていきます.鉄警隊詰所の前には所長の婦々(?)が,椅子に腰かけて涼んでいました.

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行きついたところが森林鉄道のホーム.機回線がある棒線構造で,門裏を右手に回り込んだところが出改札.

762mmナローの線路と,第3種車止.コンクリート製の給水塔は,嘉義站のロゴ付きでした.

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PC枕木とパンドロール型締結装置.ナローゲージ版は初めて見ました.

森林鉄道ホームの先端(左)と,本屋側を振り返ったところそれぞれの電車は,EMU500の(先頭567)と,最新の交流電車EMU800(先頭848).

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嘉義車庫園区

嘉義車庫園区は,森林鉄道の北門駅にある機関区一帯を,鉄道公園に整備したものです.駅から1.5km程なので十分歩ける距離ですが,炎天がこたえます.

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嘉義駅から嘉義車庫園区までのルート.北興陸橋の下を潜って先を曲がると,線路沿いの道路に出ることができます.※google mapに加筆.

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江ノ電沿線のような雰囲気ですかねぇ.道路が狭いわりに,車・バイクの往来がかなりあるので,要注意!

平日一往復だけではとってももったいない,遮断機付の立派な踏切.遮断機は2015年の日本信号製で,銘板も日本語のまま.

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線路が閉鎖されている踏切から先は側道が無いので,左手に向かいます.消防署や裁判所の前を通って,公園に至ります.

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ようやくたどり着いた「阿里山森林鐡路車庫園區」の玄関です.

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入ってすぐに「修理工廠」があります.手前の線路は本線.

 公園は200x100m程度のエリアが自由に散策できるようになっており,保存車両や現役車両が留置されていました.

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先ずは目的のシェイにご対面ということで,13号(1910年,米LIMA社製).762mmとはいえ意外と大きかったので,ちょっと驚き.

シリンダー部分とキャブ内部の様子です.

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台車の様子.当然ながらベベルギア側に軸ばねは無く,反対側にかろうじて小さなコイルスプリングがあるのみで,振動が酷そう.乗り心地はどんなもんだったんでしょうか.

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13号のお隣は,コッペルのDL-37(1972年製).まだ十分走れそうに見えます.

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3シリンダNo.25のサイドビュー.オイル焚きの動態保存機ということで,よく手入れされていました.

No.25の前後からのショット.

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車庫の前では,職員さんたちが機関車の整備中でした.

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ターンテーブルもありました.1978年設置で89年使用中止とあり,新しいのに水が溜まり,何とももったいない状態.

ターンテーブル周りに留置されている現役客車.その横にはDL牽引の保存展示もあり.

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日車製の「中興号」で,阿里山というとこの車両が思い浮かびます.一時復活したとのことでしたが,訪問時はパテ作業中で塗装の下準備が行われていました.再稼働が楽しみですね.

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DL-11号.現役のようでした.

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23号機(1914年,米国LIMA社製)とボギー客車の展示.13号機はダイヤ型煙突でしたが,こちらは極太の煙突が目立ちます.

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ボギー車の車内の様子.細長いスペースにロングシートが伸びていました.長時間の乗車はチョットこたえそう.

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C型ロッド機DL-2.反対側のキャブ下に解説版があり,1953年三菱三原製,250HP,25tと記されていました.大袈裟なカウンターウェイトとジャックロッドが特徴的.筑波鉄道DC20と同世代?

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輪軸を利用したベンチです.台湾の鉄道公園は,アートにも造詣が深いかな.

 展示車両も線路が繋がっている部分に留置されているものが多く,現役か展示車は説明板の有無で区別しないと分からないような,混然とした公園でした.動いている様子もぜひ見たかったですが,本物のシェイに会えたことで良しとしますか.
7)集集線訪問 につづく

4 Comments

  1. 初めまして。
    ネット検索で海外の古レールを探しているうちに、
    こちらに辿り着きました。
    頭にUSAの入っているCARNEGIEは初めて見ました。
    USA CARNEGIE 1915 ET ・・・
    台湾にも色々な古レールがあるようですね。

    • admin

      2020年3月31日 at 00:04

      ご覧いただき有難うございます.台鉄では日本時代の関西/九州系管理局の文化が強く残っている感じを受けました.
      台湾も駅の建替えが進み,駅舎の柱が少なくなってきているようですね.観察できるのも今のうちかもしれません.

  2. 関西鉄道系や九州鉄道系のレールが行っている、と言うことでしょうか?
    山陽鉄道も行っているのが分かりました。
    https://twitter.com/oomatipalk/status/1155835812023418882

    サハリンにも旧日本鉄道や官鉄のレールが行っているのを見つけているので、旧外地には案外国内でまだ発見されていないレールなども行っているのかも知れません。

    • admin

      2020年3月31日 at 20:21

      糖博物館@高雄に展示されていた合図灯が国内では珍しい「廻し形」で(台湾糖業博物館の記事),西日本系と思った次第です..
      レールの発注は台湾総督府だった可能性もあるので,あえてUSAを入れたのかもしれないですね.
      古レールは想像もつかないところに使われいますし,海外であればなおさら鋼材の有効活用で残っていると思います.
      御茶ノ水橋の都電レールもタイムカプセルのようで,今後の調査・発掘の可能性は大きいでしょうね.
      とはいえホーム屋根柱などは塗装の厚塗りで訪問時になかなか素性をクリアにできないのですが,極力写真に撮り後で画像強調処理などを試みているところです.
      古レールさんの調査にも期待してます.

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