4年ぶりに台湾での仕事が入り,南部の高雄に出かけてきました.羽田から高雄へは直行便が無いので,台北に降りて高鐵で新左營(高雄市内)に向かうという願ってもないルート.ついでに台湾一周乗りつぶしもということで,いろいろ取り交ぜての紹介です.まずは,台湾糖業博物館のナローDLから始めましょう.

台湾糖業博物館

 高雄は台湾南部の港町で,MRTやLRTなど趣味人にも魅力のある都市です.土地勘を養うため,例によってMRTの乗りつぶしから始め,レッドライン(紅線)を北上しました.終点に近い橋頭糖廠站を過ぎたあたりで高架下を見ると,ナローゲージのヤードらしいものが草むらの中に見え,DLも留置されています.大きな煙突に台糖の社章が見えたので,これが噂の台湾糖業博物館かと合点し,終点の南岡山の取材もソコソコにとんぼ返りし見学してみました.

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橋頭糖廠站を出て左手にしばらく歩くと,「糖」と書かれた入口があるので,間違えることはありません.2006年5月に会社創立60周年記念事業としてオープンしたということで,無料で一般開放されています.

ナローゲージ車両

サトウキビを工場に搬入するため,762mmゲージの鉄道が敷設されています.

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工場に入ってまず出迎えてくれるのが,DLと専用貨車の編成です.撮影用のお立ち台から,工場をバックに綺麗に収まる位置に置かれています.

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工場側から車両展示スペースを見たところ.奥に見える高架はMRT紅線.さらにその奥には,台鉄の線路があります.

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貨車のバリエーションはあるものの,基本的には側扉の無い,または簡易柵のある無蓋車.

これは人車付きの編成.中を覗くと手ブレーキハンドルが上向きに突き出していました.

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DLのエンジンとピンリンク連結器.スリットが水平に貫通してるので,朝顔形とはちょっと異なる機構.

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解説板が無かったので何ともわかりませんが,左の四角いのはミ(除草剤?),右は工場で使用する薬剤用のタキと思われます.

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DLの銘板一式です.機関車ナンバーのほかに,台糖の翼型社章とメーカーズプレート「渓州牌柴油機車」の3点セットでした.

さてこのDLですが,1956-57年に米国のBrookville Equipment Corporation(ペンシルバニア州,HPあり)より50両輸入したもので(No.901-950),動輪直径610mm,120馬力というスペックです.「渓州牌柴油機車」とは本来のメーカー名「Brookville」を「溪流旁的村莊(川辺村とでも?)」と中国語に当てたのと,当時の台糖本社所在地が彰化県渓州莊にあったので,「渓州牌(ブランド)」になったということです(台湾版Wikiより).

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MRT高架沿いにはDLや貨車が留置されていましたので,一両ずつ形式写真を撮ってみました.

先頭の942と913.

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ラストナンバーの950とちょっとかわいそうな状態のブービー949.

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1両だけ入っていた日立のロッド式C型DL,849.1969年の銘板がついていましたが,製番が塗装でつぶれて読めず.帰ってから機関車表で調べてみると,製番13090 笠戸工場 1969-12-20 D16tC,台湾製糖公司(台湾)のデータにたどり着きました.

プレート無しDLと一両だけ離れて置かれた920.

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各種の業務用車両とヤード構内のプラットホーム.奥の屋根付き車両は遊覧用?

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こちらは遊覧用DLの機関庫で,DIEMAの車両がいました.DIEMA:Diepholzer Maschinenfabrik Fritz Schottler GmbH,独・ディーフォルツ市で187年に農業機械会社として創設も,業績不振で1993年に破産.

糖業歴史館

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レンガ倉庫の中は綺麗に改築され,博物館のような展示スペースになっています.

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館内に展示されているC型タンクロコの361号機.

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展示物の中には合図灯もありました.取っ手の向きがレンズと異なるので,廻し型ですね.ということは関西系の管理局文化だったのでしょうかねぇ.

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歴史館の向いは,大型の農業機械の展示スペースになっています.ロボットみたいに見えますね.

製糖工場

車両の展示スペースから奥に進むと,製糖工場の設備がそのまま展示されており,点検用通路をたどって見学できるようになっています.製鉄所並みの強大な設備に圧倒され,製糖が設備依存産業であることがよくわかりました.

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鉄道で運ばれたサトウキビは,ここで荷役機械により荷下ろしされ,線路下のホッパービンに落とされます.鉱山を思わせる怪しい雰囲気.

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ホッパー受口からはベルトコンベアで右側の工場に搬入されます.ダンプ荷台から直接投入することもあったようです.

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コンベアで運ばれたサトウキビは,巨大な破砕装置により砕かれていきます.

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破砕したサトウキビを蒸して,糖蜜液を得るための圧力釜です.

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糖蜜液を濃縮して砂糖の結晶を得るための蒸発釜です.外側は断熱材代わりの白い木材で覆われていました.

左は線路の配置図(消火設備配置図)と,工場のシンボルの煙突.MRTからでもよく目立ちます.

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日曜の朝,雷雨直後に訪問したので人影がまばらでしたが,帰るころには観光バスで団体も乗り付けていました.メインの観光ルートからは外れているようで,趣味人にとってはありがたい見学先です.

2)LRTとMRT に続く