都心部や機関区の様子がある程度分かると,今度はローカル線も観察してみたいということで,台北近郊の平渓線を訪問してみました.1時間に1本程度の運転間隔で,列車は東部幹線の八堵から折り返し,三貂嶺から平渓線に入るシャトル運行スタイルです.列車は日車1998~1999年製のDC1000型3両編成で,車体がラッピングされているものやロングシートに改造されているものがありました.
三貂嶺から平渓線に入ると,列車は基隆川沿いにゆっくりと進みます.イメージ的には青梅線の軍畑から上流方面といった感じでしょうか.だた,水と緑がかなり濃厚で,この日も彼の地のご多分に漏れず,結構な雨でした.途中の十分駅は滝で有名な観光地で,かなりの乗客が下車しましたが,とりあえず終点まで乗ってみました.
菁桐駅横には炭鉱に使われたと思しきロコとトロッコが展示されていますが,現状,竹筒の奉納場所と化しています.軌間は2フィート程度でしょうか.かなり狭く見えました.ロコの軸受蓋には「KBT」の陽刻がありましたが,ちょっと聞かないメーカー名です.またトロッコ側の運転席には「フクケン」のカタカナが見えました.他に銘板らしきものは見当たらなかったのですが,やはり日本製でしょうか.折り返し時間が迫り,十分な調査時間が取れなかったのが残念です.
この後すぐに乗ってきた列車で折り返し,十分駅へと向かいます.一番前の車両は転換クロスシートで,最前列は特等席ですが,この日は職員さんが座っていたので,すぐ後ろから前面展望を楽しみました.途中,前出の女性車掌さんに職員さんと勘違いされて話しかけられたのですが,当方英語しかわからずアウト!もったいないと反省しきりで,この次はしっかり台湾語を勉強してこようと思った次第です.さて,列車は20km/h程度のゆっくりした速度で勾配を下り,ほどなく十分駅に着きました.
十分駅を発車するDCの動画です.先頭からDRC1030-DRC1016-DRC1034の3両編成で,先頭のみオリジナルのステンレス・クロスシート車,後ろ2両はラッピング車でロングシートに改造されています.
十分駅は滝(十分瀑布)で有名ですが、もうひとつ鉄道ファン向けの施設として「臺灣煤礦博物館」があり,炭坑用トロッコに乗車することができます.これを逃す手はないとさっそく駅付近にあった案内図を頼りに歩いてみました.ところが鉱山機関車が置いてある入場券売り場らしきところは閉鎖されており,誰もいません.山道に「入口アト300m先」という表示があったので登ってしばらく行くと,耳の立った凶暴そうな黒犬に突然吠え掛かられ,これはマズイとスタコラ退散してきました.
十分駅のもう一つの名物は「天燈」です.これはビニール製の小型熱気球で,表面に毛筆で願い事を書き,下部で火を燃やして膨らませ空に奉納します.これがナント線路上で行われており,列車が来ないとき線路周辺は,天燈の奉納場所と化します.本数が少なく,十分駅が列車交換場所なので可能なことでしょうが,とても珍しい光景でした.
雨の中を歩き回り疲れ切ったので,軽食とビールにありつき休んでいると,突然タイフォンの音がして工事用のモーターカーが2連で滑り込んできました.職員さんたちが昼食をとるためにホーム横付で列車が止められたようです.工事用車両を間近で観察できる貴重な機会,ということで食事もそこそこに撮影しました.このモーターカー,職員さんがお弁当を食べ終わると入換・転線し,警笛を鳴らしてあっという間に姿を消してしまいました.
菁桐,十分両駅では平渓線のローカルムードと観光地をとしての雰囲気を十分楽しみ,期せずしてモーターカーにも会うことができ大満足でした.惜しむらくは十分瀑布と列車のツーショット写真を撮れなかったことですが,雨でカメラが濡れてしまい今回はやむなく諦めました.ただし帰路は,往路で見当つけておいた駅で貨車や様々の列車を観察・撮影しながら,途中下車を繰り返して帰りました.
6)台鉄車両Ⅰ に続く