日本の新幹線初の海外展開ということで,台湾高速鐵道(高鐵)の乗車はどうしても外せません.といって本業との時間的制約もあるため,ほぼ中点の台中まで乗車し,併せて台湾唯一の扇形機関庫がある彰化駅まで行ってみることにしました.
台北から台中へ
台北駅は東京駅のような鉄道の要衝ですが,高鐵,台鉄とも両側数駅手前から地下化されているため,明かり区間は存在しません.駅の建物の地上部分は荘重な作りですが,地下道ベースなので地上からアクセスしようとすると横断歩道等が無く,目の前に駅が見えるのになかなか到達できないハメとなります.地下には切符理売り場とともに,八重洲地下街のような広大なショッピングモールもあり,買い物の人々で賑わっていました.
立派な屋根の台北駅.広いバスターミナルやタクシー乗場などと一体化されています.
高鐵に乗ろうと決めたのは前日だったので,乗車券は当日売りを駅で購入です.幸い中国語不案内でも,中/英語両方使える自動販売機があったので,これで台中までの乗車券/指定特急券を購入することができました.
高鐵の有人切符売り場.LCDに時刻表と座席の有無などの情報が示されています.
こちらはクレジットカードが使える自動発券機.英語も可能ですが,日本人には地名が漢字のほうが分かりやすいので,中国語(繁体字)のままで購入を進めたほうが良いでしょう(英語だと漢字の中国語読みスペルで,かえって分からんです).
台中まで購入した119レの切符.1号車の2Dで,なんと2人席最前部!運賃+料金はNT$765(約2600円).
自動改札機を入ると,ホーム(月台)へは行けず,階段規制がかかっていました.これはホーム幅が狭く,降車が終了してからでないと危険なためと,ホームへ出てみて初めて分かりました.
自動改札を入ったところの発車案内板です.高鐵では日本と同様にホーム番号を割り振っていましたが,MRTや台鉄はホーム自体に番号を割り当て,左右はA/Bで区別する方式.たとえば高鐵の島式ホームの1/2番線は,MRTや台鉄では1A/1B番線と表示されます.
階段下で規制されていた列がようやく動き始めたところです.皆さんホッとした表情でした.
車両は700系ベースの700Tですが,塗り分けがひかりレールスター風なのと,トンネル断面積が大きく微気圧波対策が緩いので,オリジナルのオタフク顔に比べてかなり引き締まった印象でした.
台北駅で初めて対面した700T型.この日お世話になったのは川重製のTR28編成.日本のように乗務員専用の扉は無く,運転士さんも乗客デッキからの乗務です.
連結面ですが,塗装を除くと新幹線同様で,日本にいるのかと錯覚.
700系ベースは車内も同様で,加速音などホントに日本の新幹線に乗っているようでした.ワゴンの車内販売もあり,通路上のLED表示機には時々の走行速度が表示され,286km/hの表示が確認できました.東海道新幹線の静岡県内を走行しているような雰囲気で,あっという間に50分が過ぎ台中駅に着きました.
2+3の新幹線配置の室内の様子.座席上部のニギリは700系というより英国InterCity125のMarkII型客車を思い起こさせます.
1号車の1D・E は荷物置き場となっており,座席としては欠番で,2Dはこの列車の二人席通路側の最先頭でした.隣席にはネクタイ+スーツ姿のサラリーマン氏がいて,しきりにノートPCで文書を作成しており,どこの国でも変わらずと納得.それに引き替え,日立のクーラー広告のお姉さんが何とも妖しいなぁ.
高鐵台中駅のホームで撮影した700T.ヘッドライト周りはE3系こまちのような印象.なお,高鐵は日本と同様に左側通行でした.
天井が高くやたらと広い高鐵台中駅の自動改札機前コンコース.土産店やカフェもありましたが,閑散とした雰囲気でした.なお乗車券は回収されず改札機から出てくるので,これを捨てるため三角くじに使うような透明箱が置いてありました.
高鐵台中から彰化へ
彰化は在来線の台鉄に乗り換えて2駅先です.このため高鐵台中駅で乗り換えますが,台鉄側は新烏日(シンウーリー)という別名の駅となっています.しかし両者は立派な連絡橋で結ばれているので,迷うことはありませんでした.また連絡橋近辺には「台湾鉄道故事館」という売店があり,模型や鉄道グッズを売っています.訪問時は開店時間前で,窓越しに覗くことしかできず,残念でした.
台鉄の新烏日駅の広大なコンコース.高鐵への対抗意識の表れでしょうか?有効に機能しているのは,左奥の自動券売機と窓口,中央の自動改札機のみ.
ホームに降りて列車を待っていると,突然軍用トラックを積んだ短い貨物列車が現れました.機関車はGM製電気式のR20型R34号機(1960年製).A1A-A1Aの台車が独特.
ワキ+チキ+ワフの編成で,チキに軍用トラックが積載されています.ホームで停車することなく,徐行でソロソロと通過していきました.後で気づいたのですが,ワフの窓から兵士の鋭い視線が向けられていました.
ようやく彰化方面への列車がやってきました.これは集集線直通の2711レで,日車製のDR1000型(1998~9年製).屋上の排気管と冷却器がキハ180よりもずっと派手でした.
DR1000の車内です.日本のキハでは排気管が車内中央窓側に立ち上げられていますが,これを丸い門型仕切りでカバーしています.中国風で上手い意匠ですね.ちなみに丸門形状は風水では「天の情報」,五行では「金」を表すとか.奥が深そう.
12~3分ほどの乗車で目指す「彰化」駅に着きました.構内には自強号,旧客,貨車などがおり,大いに撮影意欲を掻き立てられました.
3)彰化機務段 に続く