台湾で初めての仕事が入ったので,空き時間を有効に使い,彼の地の状況を観察してきました.台湾の鉄道状況,特に車両についてはweb上の情報量も多いので,本ルポ探では日本の鉄道システムと比較して,筆者が珍しいと感じた部分を中心に紹介していきたいと思います.
台北MRT(Mass Rapid Transport)
台北捷運という漢字が示す通り,交通渋滞を解消して高速運輸網を構築すべく,1996年から運行が始まった台北の地下鉄です.路線図のように市内を縦横に走り回っており,非常に利便性の高い鉄道です.松山空港を通る茶色の「文湖線」はいわゆるゴムタイヤ式新交通システム(ゴム電)ですが,そのほかの路線は1435mm,750Vの直流電車となっています.
乗車券はトークンまたはICカード方式で悠遊卡(ゆうゆうカード;英語名easy card)という名称です,残念ながらSonyのFelicaシステムではなく,オランダ・フィリップス社の規格に基づいています.1日乗車券もありますが,悠遊卡はSuicaやPasmoと同様,台鉄やコンビニでも使えるので,こちらを購入したほうが圧倒的に便利でしょう.悠遊卡では運賃が2割引きになるので,これもおトクです.※といっても初乗り20元(約60円)→16元.
文湖線
2009年に松山空港駅を含む路線が開業し,市内へのアクセスとして最初にお世話になるのがこの線です.フランスのマトラ社(現ジーメンス)/カナダのボンバルディア社製の4両編成ゴム電が無人運行されています.ラッシュ時はかなりの頻度で運転され,ほぼ1駅に1列車がいる状態でした.日本の同様の乗り物に比べると加速や減速はかなり急で,速度も速く感じられました.
中山國中駅から松山機場駅までの前面展望動画です(102秒).
車両長は13.8mと小柄で,正直なところチョット窮屈.ホームドアや軌道のフェンスが邪魔でよく観察できなかったのですが,ボギー車ではなく2軸車でした.台車はおおよそ下図のような構造で,1軸でも線路方向の首ふりを確保した機構と思われます.分岐器は軌道中央部にガイドウェーを設け,分岐部分のトングレールを動かして方向を制御する方式のように見えました.※ビデオでかろうじて観察可能.
淡水線ほか
台北MRTの路線は東京メトロなどと同様色分けされており,ホームでも色に従っていれば間違いありませんが,道路と同じく右側通行なので方向に要注意です.ただし車両はすべてステンレスの青帯車なので,ホームに入ってきた車両で何線か見分けるのは困難でした.基本的に6両編成,C3x1という形式のVVVF電車で,メーカーはジーメンスと川崎重工.チョッパ素子がGTOとIGBTのものがあり,日本の電車と変わらないチョッパ音が聞こえます.
※上記2点の写真,福井テレビの「台湾福ふくの旅#5(新竹県)」冒頭部39/44秒目で,資料映像としてお使いいただきました(2020.10.30).有難うございます.
台北MRTはこの11月24日に新線が開業する予定で,台北101ビル直下の駅もでき,ランドマークへのアクセスが向上します.自分が訪問したのは2週間前で,新しい駅があるのになぜ入れないんだろうと不思議に思っていました.ほんのわずか時期が早く,新線に乗れず残念!
台北MRTは滞在中,何度もお世話になりました.古亭駅などは赤坂見附や表参道のようにホームでの乗り換えに配慮されており,その利便性に感心しました.
(2)高鐵 に続く