ケ90形式は岐阜・東濃鉄道A型(1-2号)由来の762mmゲージ2軸B型SLで,1918(大正7)年,大日本軌道製の古豪です.1926(大正15)年に東濃鉄道が鉄道省に買収され,特殊狭軌線用機関車「ケ(軽便のケ)」を名乗るようになりました.ケ90-91の2両が在籍していましたが,狭軌線改軌工事,工場での教育用カットモデルなどを経て,現在でも2両が保存されているという珍しい例です.ケ90は名古屋の「リニア鉄道博物館」に,ケ91は浜松工場近くの「堀留ポッポ道」に展示されています.コロナ巣籠り中に写真を整理していると,両車の写真を撮影していることが分かったので比較してみました.

mech2-ke91

浜松工場への引込線跡地を整備した「堀留ポッポ道」に展示されているケ91.教育・観察用に所々小カットされています.蒸気溜からシリンダへのパイプが実に明快!小さい割にワルシャート式も流石!


正面の比較:ケ90は左側のシリンダ付近が欠き取られており,ブラストパイプ(かな?)が白くペイントされています.一方,ケ91ではブラストパイプのフタが欠損しています.煙突を見るとケ90はフランジ結合ですが,91はストレートです.開業時の写真を見るとストレートのようですが,根元付近に輪状の飾り(?)が見えるので,どちらがオリジナルか判然としません.

front-ke90 front-ke91

側面の比較:ケ90は煙室・ボイラ付近がシースルー状態ですが,91は原型が保たれています.煙突は90の方が高いですが,Wiki等の開業時写真を見るとこちらの寸法が正しそうです.また汽笛の形態と位置が異なっており,90はAW2の片側のようなものが砂箱と蒸気溜の間に,91は丸みを帯びた形状のものが安全弁前に取付けられています.

side-ke90 side-ke91

後部の比較:ほぼ同様ですが,90には窓に中桟がありますね.同じ露天展示にもかかわらず,鉄博のほうがやはり保存状態は良いです.

back-ke90 back-ke91

シリンダ付近の比較:90はデッキ部カットとペイントのおかげで構造がよくわかります.91はシリンダ付近のみカット.大型SLではブラストパイプはブロワ効果を期待して煙室内煙突直下にのみ設置されますが,本機では左右独立してデッキ部にも突き出した構造ですかね?小型機特有の設計方針・ノウハウが有ったでしょうが,どんなドラフト音がしたのかなぁ.
cut-ke90 cut-ke91

案内板の比較:それぞれの解説プレートです.

board-ke90 board-ke91

以下はケ91の写真で細部を見てみます.

cab1-ke91

ボイラ焚口そのものじゃん・・・というようなキャブ前部.上部の台形の引手が加減弁ハンドル,下部のギザ歯が逆転機のラッチですがレバーが失われているようでした.

mech1-ke91

加減弁レバーがキャブを突き抜け,リンク機構で蒸気溜上部のコックを回すという単純・明快なメカニズム.砂箱フタの取っ手もいいですね.安全弁は枕木方向に2個並べており,大昔でもフェールセーフは流石です!

cab2-ke91

後部のブレーキレバー.機関車のみの単弁で,錘とリンク機構でクリック動作(?)という素朴なメカニズム.

貴重なナローSLが2両とも保存されているのは驚嘆!ですが,90が博物館保存に対し,91は自治体任せの放置状態なので,今後が懸念されるところです.

撮影日:ケ90@鉄博;2016.11.17,ケ91@堀留ポッポ道;2019.11.15

本稿終わり