小田原駅の伊豆箱根鉄道・大雄山2番線と東海道3番線の間には貨物線があり,大雄山線の検査車両の受渡しを行う渡り線が設けられています.渡り線には架線が無いのでコキを控車としたELがバックで突込み,車両を連結・解放します.この作業はYouTubeにもアップされている有名なものですが,渡り線のポイント駆動メカニズムが鉄パイプを用いた双動式というチョット古いモノなので,これを観察してみました.

東海道2番線ホームから見た渡り線.レールは片渡りで敷かれていますが,架線は無し.

渡り線は一つのポイントレバーで2つの分岐を同時に切り替える「双動式」かつ鉄パイプによる「機械駆動式」です.以下は写真を基に作成した渡り線転換機構の略図です.煩雑に切換える場所では電動ポイント2組のところ,ここは使用頻度が少ないので手動式で温存.

渡り線のポイント駆動機構図.

東京方から写真で見てみます.まずは転轍テコ周りから.

201と記載された電気鎖錠器付き転轍レバー.双動型なので両側にパイプが伸びて,ローラー(パイプキャリア)で支えられています.左側はエスケープクランク(トングレール押付保持機構)を経て,大雄山線ポイントのスイッチアジャスタ(駆動棒)に接続.合成枕木できれいに手入れされています.

転轍テコには201と標記された電気鎖錠器が付いているので信号と連動していると考えられますが,インターロック元がどこか分かりません.ただポイントが切り替わっている時に2番線と貨物線に列車が入るとマズイですから,双方の場内信号機が赤の時のみロックが外れると考えるのが妥当でしょう.実際,異なる会社間のインターロックは難しいでしょうね.信号は集中扱い・テコは現場操作なので「第2種連動装置」の範疇ということになります.

右側に伸びたパイプは線路下を潜って貨物線手前側に移動.

L形クランクx2台で線路を渡る様子.枕木間にはパイプキャリアも.

途中でパイプの動く方向を逆に転換.

パイプの動作方向を逆にするためのWクランク.温度によるパイプ伸縮を除く機能も有ります(※パイプコンペンセーター).

※過去記事

転轍標識灯がある貨物線側のポイント周り.

スイッチアジャスタの反対側に接続棹を介して小型の標識灯が設置されています.形態的には交通システム電機㈱製に見えます.枕木が木製で標識も若干傾いていて心配!よく見ると向こう側のトングレールが鎖錠金具で固定されています.

ちなみにここで使われている鉄パイプは「鋼管32A(1-1/4″,インチにぶ,外φ42.7mm)」という規格で,ガス管などに良く用いられているようです.スムーズに動かすには塗油でのメンテが必須なので,維持は大変と思います.

50年前には駅構内に延々と張り巡らされていた鉄パイプ※.今はすっかり姿を消し,特殊用途で残るのみ.
※過去記事

本稿終わり