昭和39(1964)年10月の新幹線開業とともに東海道線から姿を消した151系こだま型ですが,引退直前に保土ヶ谷の大カーブで親父と一緒に見た姿は未だにはっきりと思い出すことができます.クリームと赤のきれいな車両がカントで車体を傾け,かなりの高速で通過して行く姿は実に魅力的で,乗ってみたいのにもうすぐ無くなってしまうのが残念だなあと子供心に思ったものでした.さて今回のスナップは1958年生まれの筆者も乳児期なので,親父の手になるモノのご紹介となります,古いアルバムに,「こだま」運転開始3日目の横浜駅と,廃止まであと一月にせまった「つばめ」の写真がありました.こんな写真をわざわざ撮りに行っていたということは相当の「鉄分」で,息子に遺伝するのは当たり前ですね.

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特急のシンボルマークも誇らしげな「こだま」.この日はあいにくの雨のようですが,運行開始3日目なので車体はピカピカです.このときはまだ「クハ26」で,連結器カバーも簡易型用の小型のもの.スカートも改造前で,タイフォン穴のみの端正な姿.ヘッドマークが平板構造に見えますが裏から取り替え?※鉄ピク2014年12月号p.14によれば,当時はこだま専用で固定だったとのことです.1958.11.3.横浜駅6番線.

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窓を開けてホームの様子を確認中の運転士さん.ヘッドライトとウィンカーランプは砲弾型で,ヘッドライト横の補助タイフォンはありません.JNRマークと「こだま」のサボも見えます.バックミラーのあおり方向はリンク機構で駆動し,棒を窓横の蝶ねじで止める原始的な機構.左右方向はミラー付け根で調整するようなので,かなり身を乗り出さないと届きません.今だったら車のドアミラーと同様に電動でしょうね.1958.11.3.横浜駅6番線.

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6番線を去ってゆく「こだま」.ヘッドライトにテールランプ用の赤フィルタが被せられています.背景の鉄橋は東横線.下を貨物列車が通過しています.ホーム上には,転動しないように横倒しにされた荷物用台車が見えます.1958.11.3.横浜駅6番線.

 「こだま」のウインカーランプについては当時の自動車の流行で,島秀雄氏は採用に消極的だったという逸話もありますが,以下は観光バスの様子です.

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江ノ電バスに見られたウインカーランプのような車幅灯(右上)に,なるほどと納得の次第.方向指示器もベロが水平に飛び出るタイプ.江+羽のロゴが面白い.教員だった母親が遠足引率時に撮影したもの.1962.5.2

 さて,この後,クロ等が組み込まれた豪華編成に発展し東海道線の花形となりましたが,新幹線の開通に伴い昭和39(1964)年9月いっぱいで大阪以西に移ります.以下は引退1月前の夏休中の撮影です.

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横浜駅に滑り込む「つばめ」の先頭車クロ151.ひときわ大きな窓と塗分線の違いがわかります.九州乗り入れに備えて配管を整備し,スカート周りを改造した姿.連結器カバーも自連用の大型のもの.東横線の向こうには「(酒の)大関」や「日水の缶詰」,「カルピスの黒人」看板などが見えます.東海道線ホームの東京寄りには,こんなトイレもありましたね.1964.8.21.横浜駅.

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こちらは東京側のクハ151.なぜか左下に大きなアバタが.「つばめ」のヘッドマークは上下が灰色なので,ストライプ状に見えます.右側高架ホームには,旧塗装(青/橙)の東急3000系(?)が見えます.1964.8.21.

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横浜駅を発車する「つばめ」.左にはグロベンの111系が退避してます.ホーム上の大型木製ベンチも懐かしい.1964.8.21.

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こんなベンチでしたが覚えてますか?座面が低く,背の高い座り心地の良いベンチで,ここに座るの結構好きでした.みかんを食べてるのは2歳半の筆者.1960.10.3.横浜駅

 151系の美しいフォルムは481系に発展的に受け継がれ,博物館や製造元でも保存展示がなされたということは,やはりかなりの名車ということでしょう.

(おまけ)

本題とは関係ありませんが,昭和34年の上野駅でのスナップでカラースライドなのが珍しいので掲載します.親父が出張時に撮ったものでしょう.1959.10.14

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17番線(?)停車中のEF57東北線列車と思われます.地上ホーム側は荷物列車.※スライドのマウントに「金沢行急行 白山号,9:05」とありました(追記:2015.4.9).

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発車待ちの80系全金製のクハ86-300番台.運行番号が21Tなので,高崎線かな?向こう側の荷物列車も含めて,なんとものんびりした雰囲気です.高架ホームにはSLが居るのか,煙が漂っているように見えます.※同じくマウントに「水上行,9:10」とありました(追記:2015.4.9).

(おわり)