(3)モノレール

1962年のシアトル万博にあわせて,会場(Seattle Center駅)と市中心部(Westlake Center Mall駅)の間1マイルを結ぶ交通機関として$3500万(¥360換算で126億円)の費用をかけて建設され,同年3月24日に開業しました.軌道を見ると東京モノレールにあまりにそっくりなのに驚きますが,それもそのはず,アルベーグ社自らの建設路線で,しかもこちらの方が2年先輩です (東京モノレールは1964年9月17日開業,アルベーグ・日立式).万博後,財団の所有を経て1965年に市が$60万で買収し,現在は指定管理者制で運行しています.路線延長が計画されたことがありますが,2005年の市民投票の結果,主に資金的理由から断念されました.現在の輸送量は年間150万人で,補助金なしの健全経営とのことです.運行間隔は通常10分おき,混雑時は5分以下の間隔で,片道$2と距離からするとちょっと高めで,市民の足というより観光要素のかなり強い路線です.

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Westlake Center Mall駅内側線に進入する赤編成.運転台の計器はモニタのみ.

車両は赤・青の4両編成2本のみで,世界で現存する唯一のアルヴェーグ社製の車両として貴重品とされています.直流700V,最高時速50mph(80km/h).制御システムはGE,ブレーキはウエスチングハウス(WABCO),走行装置はロックウェル製で,開業以来40年間のメンテに耐えています.運転台は左手のレバー型マスコンと正面タッチパネルの簡素なもので,ドア扱いも日本のようなごつい車掌スイッチでなく,タッチパネルの2か所を同時に触れる仕組みでした.重厚感のない運転装置は不安にも思えましたが,考えてみれば昔ながらの機械式装置の構成を今日の電子装置にそのまま適用する必要はなく,アメリカ的な合理性を感じました.

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Mall駅内側線に進入する青編成.ホームドアはタラップが折りたたまれている状態です.


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下から見上げたWestlake Center Mall駅.末端に大きな1本物の緩衝機があります.

線路は道路上に62本のPC橋脚で構成された複線ですが,全線にわたりポイントが無い完全平行線なので,編成により走行する線路が決まっています.Seattle Center駅側は島式ホームなのでどちらの車両でも乗降に問題ありませんが,ダウンタウンのMall駅側はビル脇の片側高架ホームなので,内側軌道のみ直接ホームに発着可能です.そこで外側の軌道に車両が来ると,タラップのようなものが内側軌道上にせり出し,車両の出入り口に横付けする構造となっており,この鉄道の特徴となっています.なお車両基地のようなものは特に存在せず,Seattle Center駅の地下ピットでメンテナンスを行っているようです.

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Westlake Center Mall駅の内側線を越えて外側線の赤編成に伸びるタラップの様子.

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Seattle Center駅の線路末端の車止めと検修ピット.スペアタイヤが見えます.


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モノレールの切符.自販機は無く,係員に料金を払ってレシートを受取る方式でした.

(4)につづく