線路メンテナンス用のバラスト積込み設備には,設置場所や会社の経営方針によりさまざまの態様のものが見られます.JRでは採掘場直結(西金駅)やレールセンターなど,大掛かりな設備もありますが,私鉄では小規模の設備を要所〃に配置している例がほとんどでしょう.平積場から機械化されたものなど,これらの違いを見てみましょう.

平積式

 バラスト積込専用ホームから,ホイールローダーなどを使ってジャリトロに積込む一般的な方法です.最近では国鉄の砂利輸送の定番だったホキ800に代わり小型ジャリトロが多く見られますが,積込みに必要なホーム高さが低くて済むからでしょう.

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小田急・桜ヶ丘駅構内のバラスト積込みホーム.奥の砂利山からホイールローダーですくって,ホームに横付けされたジャリトロに積込む標準的な方法.設備的には安上がりですが,ローダーが旋回可能な作業面積が必要です.

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反対側はピット状に一段低くなっており,土まじりの古いバラストが見られました.回収した古バラストをここに落とし込んで,まとまった量になったら処分場へと積み出すのでしょう.重量物を扱う設備として,単純ですが高低差をうまく用いた構成です.中に居たホイールローダーは,コマツ製WA-100のキャノピー仕様,バケット容量は1.3m3.小田急ではない社名が入っていたので,関連作業は外注か.

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藤沢側から見た桜ヶ丘駅.左側のシェッドを通っているのが,バラスト積込線.ここにはマルタイなどの大型車両が居ることが多いのですが,この日は藤沢駅に出張していました.

コンベア式

 ダンプなどからバラスト貯めに砂利を落とし込み,ここからベルトコンベアでジャリトロに積込む方法です.昔の鉱山ではホキ列車が移動しながら積込みを行っていましたが,現在では停車したジャリトロ列車上をコンベアの積込ホッパが移動し,均等になるよう積載します.設備は大掛かりになりますが,設置面積は平積み式に比べて少なくて済みます.

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東急・田園都市線・江田駅近くにある「赤田保線機械基地」全景.バラスト積込みコンベアとジャリトロが見えます.この日はレール削正車(Tokyu Rail Rectifier;スペノ社製)も居ました.

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手前の格子はバラスト貯めに砂利入れる落とし口です.この構内幅では,ダンプは道路からゲートをバックで入って来ざるをえないでしょうね.手前の斜めのコンベアでバラストを貯めからすくい上げ,積込み用のコンベア上に落とします.ここでもやはり高低差をうまく使っています.構内はアスファルト舗装され,路面電車の線路のよう.

 

 

 

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2つのコンベアの組み合わせ部分.移動式コンベアの下部には旋回式のシューターが付いており,積込位置をジャリトロ中央に合わせます.

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ジャリトロ4両編成のうち2両満載+1両半載の状態です.今夜あたりに出かけるのでしょうか.大井町線直通の6000系急行が通過していきました.

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こちらは同線・南町田駅にある「南町田保線機械基地」の様子.車両が留置されていることはめったにないのですが,この日はモーターカー2両とレール削正車がいました.肝心のコンベアは車両の影になっています.

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黄色い階段がコンベアの末端で,奥の積込口へと延びています.

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ここは陸橋と同一平面上にある場所から砂利を投入する仕組み.このため2階建ての建物からコンベアが出ており,複数のコンベアを経由して積載用移動コンベアに至る複雑な構成.シューターは固定でレール間に突き出ている仕様.ここでは設備の面積は線路1線分+αで,切通し地形もバラスト貯めには好都合.

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陸橋側から見た積込み口.ここからバラスト貯めに砂利を落とし込みます.

 バラスト積込設備は地味ですが,よく見ると重量物ならではの工夫がなされていることが分かりますね.
(おわり)