32年ぶりに函館出張の仕事が入り大喜びで出かけたところ,到着日9/4夜半は台風21号の荒天,翌々日未明には胆振地震に見舞われ,思いかけずに天災訓練合宿になってしまいました.7年前の3.11東日本震災では電気/水道は使えましたが,今回は前代未聞の完全blackout!「電気が使えず水も出ず」という生活がどういうものか,ホテルでの実体験を通じ身に染みてわかりました.

函館北斗駅

 北海道新幹線で到着した乗客が必ずお世話になる駅で,札幌延伸時には通過駅になってしまいますが,現在は北海道の玄関口.反面,在来線にはかつての函館本線特急の賑わいは無く,コンテナ満載の貨物列車が元気に走ってました.

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U29編成[仙セシ]の1号車E514-29/グランクラスです.どこで見ても,やはり細長い鼻ズラが目立ますねぇ.これより長い試験車ができるようですが,微気圧波対策ならトンネルポータルを拡幅したほうが,長期的には安上がりなのでは?

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ホームから見た車止は砂利盛りとコマイヌの単純な構造.札幌延伸時は,線路が長く伸びていることでしょう.

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新幹線改札を出て外へ回ると在来線出札がありますが,自動販売機は1台のみ.多くのお客さんはこの裏側の緑の窓口で切符を買っていました.自動改札はSuica/PASMOは未対応で,北海道以外からの旅客には何とも不便.

“在来線上の跨線橋から見た構内の様子.札幌方面(左)と函館方面(右).

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モダンなつくりの函館北斗駅.ただ駅前にはレンタカー会社があるのみで,閑散としていました.大昔,田んぼの中に立っていた新横浜駅を彷彿とさせます.

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函館方面に乗客を継送する「函館ライナー」.今回は733系[函ハコ]B-1001編成でした.

函館駅

 連絡船がなくなり,はや30年.前回訪問時は札幌出張の帰りで,DD51牽引の14系急行「ニセコ」で道南に向かい,羊蹄丸で海峡を突っ切り,583系「はくつる」で上野に着いたのも歴史の彼方.駅はモダンに改装され,朝市の建物ともども昔の面影はありませんでした.

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函館駅に到着した「函館ライナー」.到着直前に台風21号大雨避難の非常一斉メールが入り,皆さん携帯をチェックしてました.

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道南いさりび鉄道のキハ40-1793「ながまれ」号.ながまれは『ゆっくり/のんびり』の道南弁とか.

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函館本線の0キロポストですが,窓際に219m記載のポストもあります.これは連絡船時代の駅からの起点のずれだそうで,グーグルマップで測ってみると,大雪丸の錨が保存されているあたりが旧起点のようですね.

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駅舎横には0キロポストのモニュメントもありますが,これは完全に記念/インスタ用でしょう.函館ゆるきゃら「イカール星人」の郵便ポストか・・・と思いましたが,どうやら局の独自デザインのようです.

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夜の函館駅.台風は通過直前で小雨でしたが,深夜は豪雨でした.

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ライトアップされた摩周丸.青函連絡船には1回しか乗れませんでしたが,出発/到着時刻の正確さに,さすが国鉄!と感心したことを覚えています.

函館運輸所と五稜郭車両所

 当初予定では五稜郭でDF200と有川支線を取材する予定だったのですが,停電で鉄道はJRも市電も完全ストップ,バスも同様で,足はタクシーだけでした.TVも映らずネットもできずとなると,やることは歩き回るくらいで,午前中は市電を見学,午後は五稜郭方面へ撮影行で,結局1日で23kmほど歩きました.

函館運輸所

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中央埠頭跨線橋から見た函館運輸所の様子.台風一過の良い天気で函館山もよく見えてますが,かなり暑かったです.車両が動いていないので,前々日の豪雨でレールは赤サビだらけ!

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庫内で手持無沙汰の首都圏色キハ40-1807と顔を出している1803.

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こちらは入替用のDE10-1738で,やはり機関停止状態でした.旋回窓がさすが北海道仕様.双頭連結器装備車で,密連になってますね.

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運輸所とは反対側の連絡船埠頭側にある立体駐車場からの眺め.すぐ下にターンテーブルがありましたが放射状の線路が無いので,方転用に残されているようでした.左側にはキハ183/281系が留まってました.

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ナント構内にE001「四季島」が261系とともに留置されていました.いくらハイブリッド車でも,台風+地震には勝てませんよね.

 この後は線路沿いに北上し,五稜郭駅まで歩きました.大きな道路の踏切は遮断棹が外され通行フリーになっていましたが,小さな踏切では警報機が作動し続けており,信号掛の職員さんが対応に追われていました.

五稜郭車両所

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五稜郭駅の様子です.駅名が一文字ずつ星形に埋め込まれた意匠.タクシーが手持無沙汰に客待ちしてましたが,このあとでお世話になりました.駅反対側のコジマ・ビックカメラで飲料水をゲットしましたが,携帯充電器はとっくに売り切れ.信号機が死んでいたので,R5を渡るのがなかなかスリリングでした.

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駅の南端側にあったテールライトハウス.線路間にもところどころ1対ずつおいてありました.コキの後尾に取り付けるのでしょうね.

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駅北側の細い跨線橋から保線基地を望む.レール輸送用モーターカー編成の横には,取り外されたラモの除雪機械部が置いてありました.

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車両所構内留置されていた函館運転所救援車ワキ5233とオイラン車オヤ31-32.オヤは車両所の公開時に人気があるそうです.

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名古屋のリニア館で同型オヤ32-12は見たものの,屋外で現物を見るのはそれなりにインパクト大!種車は連合軍部隊調理車オシ33-105ということですが,ルーツは昭和7年日車製のスハ32-331で,御齢86歳なので野ざらしは気の毒.どんな所を走ってきたんでしょうかねぇ.

震災点描

 台風と地震後の様子です.本ブログの趣旨から若干はずれますが,滅多にない番外編ということで.

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2018.9.4の到着当日夜の函館駅改札口.夕方から風雨が激しくなり,案内電光板は「台風の影響により運休」の表示のみ.

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これは地震当日(9/6)朝の同じ場所.Blackoutで電光板もblack!ホワイトボードの手書き情報のみが頼りです.駅員さんも質問に答えられず,頭をかくしかないですね.気の毒だったの宿をチェックアウトした外人さんで,夜は駅で仮眠してる方々もいました.

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対照的に元気だった函館朝市.カセットコンロや炭火で供食しているお店がありました.さすが道産子根性!

 朝食はホテルが前日仕込み分を出してくれたものの,blackoutがいつ復旧するか分からず,以後の食料と水の調達に困った次第!じっとしていてもしょうがないので,物資調達と取材を兼ねて市内を歩き回りました.

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駅前の棒二森屋(屋号が|と二なのでボウニ)が,デパ地下の物資を¥100で店頭ワゴンセールに出してくれました.向かいのコンビニが閉まっているときに大変有難く,昼食用のパンと2Lのペットボトルをゲットできました.でもこのデパート来年1月で廃業とか.何ともやるせないですね.

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函館ドック方面に向かう途中のホームセンターの行列.この他,ツルハなどでも長蛇の列でした.首都圏の場合を想像すると恐ろしいですね.

 というわで,後半は天災ルポ探になってしまいましたが「いつ電気が復旧し水が自由に使えるようになるか全く分からない」という状態は誠に心もとなく,まして旅先では言わずもがなです.TVは見られずネットも不調で停電の全体像が把握できず,スマホのバッテリ残量を気にしながら関東の自宅に電話して情報を得るのが唯一の手段でした.ホームセンターやコンビニで真っ先に売り切れていたのは,スマホ/携帯の充電池(器),電池,カセットコンロ,ラジオなどで,意外と水や食料(生鮮ではない)はありましたね.コンビニ営業の明暗を分けたのはバッテリバックアップが可能なレジの有無で,セブンイレブンはところどころ開店,ローソンは全滅,ミニストップは手書き帳簿で対応など様々でした.本部の経営方針により対応が異なっていたということを後で知りましたが,地元資本のセイコーマートはどこも開店しており,危機管理の優秀さでは抜きんでていた感があります.しかしやはり「現金」は重要です.Suica/PASMOやクレカに慣れ切った生活は,所詮データ通信に支えられているもの.停電復旧後もサーバーがダウンしていて決済できないということで,帰路の函館北斗駅の土産物店ですら現金決済でした.最近マスコミではスマホ決済が喧伝され,現金が時代遅れのように言われてますが,今回の経験から顧みると非常時にちゃんと機能するのか大いに疑問です.

2)函館市電 に続く